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庭と珈琲を楽しむ家

新発田市 N邸 新発田の家
※本記事は住宅情報WEBマガジンDaily Lives Niigataによる取材記事です。

ゆとりある敷地にゆったり佇む白の家

新発田市内の住宅街。
白いガルバリウム鋼板の壁が明るく爽やかなN邸は、100坪の広い敷地に立っている。

ゆとりある土地を生かして、カーポートはサイドに配置。ポーチ前には車を転回できるくらいの広々としたスペースを確保している。

カーポートと建物の間には小さな築山がつくられており、そこには屋根よりも高いアオダモがひょろりと伸びている。

その隣に植えられている背の低い木はモミジ。

どちらも四季の移ろいを教えてくれる落葉樹だ。

ポーチの上の庇は金属の骨組みを持ち、厚みを抑えたシャープなデザインがシンプルな外観によく似合う。

要素を抑えたミニマルな外観デザインで、それゆえに一つ一つの素材感が際立っている。

木製ドアの向こうにはどんな空間が広がっているのだろうか?そんな期待感が湧いてくる。 この家に暮らすのは30代のNさん夫婦。

「2018年に結婚し、妻と新発田市内のアパートで暮らし始めました。それから2年がたった頃に家づくりを検討し始め、いくつかの住宅会社さんを訪れたんです。その中の一つが加藤淳設計事務所さんとAg-工務店さんでした。同じ新発田市内にあるAg-工務店の渡邊健太さんの家に見学に行くと、建物が敷地に対して斜めに立っていて。『そういうのもありなんですか!?』と驚かされました。桐の床や和紙の壁などを使った、優しい素材感も印象的でしたね」とご主人。

希望したのは明るい家だったという。

「アパートが暗くて狭かったので、明るくて柔らかい雰囲気の家を建てたいと思っていました」と奥様。

「あと、僕は植物を育てるのが好きで、庭をつくりたいとも思っていました。それから、多肉植物や塊根植物も育てていたので、室内でも植物を育てやすいように土間空間も希望しました」(ご主人)。

玄関から庭へ。居室を貫く通り土間

お二人の要望と敷地条件を読み取り、一級建築士の加藤淳さんが提案したのは、玄関から建物裏手にある庭へと抜けられる“通り土間”がある家だった。

玄関に上がり框(かまち)はなく、そのまま奥へとコンクリート土間が続いている。正面に目を向ければ、奥にはテラスドアがあり、そこから庭へと通り抜けられる設計だ。

土足で使う想定でつくられた土間だが、Nさん夫婦は入口にギャッベを置いて、その手前で下足する使い方をしている。

ちなみに正面だけでなく、玄関左手に向かう動線もある。

こちらはシューズクロークとパントリーを経てキッチンにつながる家族用の裏動線。

通り土間の左手は、幅2.7mのリビングとダイニングが奥へと続いており、屋根なりの勾配天井で奥に行くほど空間が広くなっている。

その逆側はチークのパーケットフローリングが目を引くワークスペース兼客間。

「お客さんが泊まれる客間があった方がいいなと思いながらも、実際にお客さんが泊まりに来ることはほとんどないと考えていて、普段はワークスペースとして使える場所をつくって頂きました」とご主人。

3.75畳の空間は、通り土間を間に挟むことでリビングと程よい距離が生まれていて、集中して作業ができそうだ。ニーチェアエックスに腰掛けて音楽鑑賞をする場所にもなっている。

また、リネンのカーテンを閉じれば柔らかく空間を仕切ることもできる。

「道路に対して平行に建てるのではなく、なるべく真南向きにして光をたっぷりと採りこめるように敷地に対して斜めに建てています。玄関から通り土間を抜けて、そのまま庭へと出られるようにし、その先には土間テラスも設けました。さらに、庭を盛り土にして、建物と庭の距離が近くなるようにしています」と設計をした加藤淳さんは説明する。

オークの床と調和するこだわりの家具

リビングの床は190mm幅のオークの挽き板のフローリング。挽き板とは、厚さ2~4mmの単板を表層に用いたフローリングで、見た目は一枚ものの無垢フローリングとほぼ変わらない。価格が抑えられ、限りある木材資源の節約にもつながる。

「はじめからオークの床にしたいと思っていましたが、床材店のアンドウッドさんで何種類かを見て、幅広の乱尺がいいなと思いこの床を選びました」(ご主人)。

ダイニングは正円のテーブルを囲むように、UUチェア(宮崎椅子製作所)やCH88(カールハンセン&サン)、マウンテンアンドレイクチェア(ISANA)などのこだわりの椅子が並んでいる。

頭上に見える真鍮製のペンダントライトはflame社のflare。その上は吹き抜けで、2階のホールまでがつながる開放的な空間だ。

壁には床置きエアコンの存在感をやわらげるように本棚が造りつけられており、夫婦のお気に入りの雑貨や小物が心地いい余白を残しながら飾られている。

テレビはリビングとダイニングの間の幅1.8mの空間に配されていて、その両サイドは掃き出し窓。その上には3連の高窓が並んでおり、そこからたっぷりと光が注ぐ。

「庭を眺められることを希望していましたが、私はテレビも好きで。ダイニング・ソファ・キッチンなど、いろいろな場所からテレビを見られるようにして頂きました。それから、窓の上の庇の長さが計算されていて、夏の暑い時季は日差しが遮られ快適に過ごすことができましたね」(奥様)。

窓側の壁はラワンベニヤで仕上げることで、白い和紙の壁とのコントラストをつくり出している。

「リビングの窓回りをきれいに納めることや、一つ一つ表情が異なるラワンベニヤの色味を合わせて張ることが施工における大事なポイントでした」とAg-工務店の代表・渡部栄次さんは話す。

美しいコーヒー道具が並ぶキッチン

キッチン前の腰壁はアガチスの羽目板仕上げ。レンジフードはオークの集成材で覆い隠すことで、木の表情があふれる優しい雰囲気に仕上がっている。

キッチンのカップボードは隠す収納をしっかりと確保した上で、それ以外は見せる収納に。

上の棚は、HARIOのサーバー&コーヒープレス、ORIGAMIのドリッパーやマーシャルのワイヤレススピーカーなどが並ぶカフェライクな一角だ。

その下の棚には、バーミキュラのライスポットにバルミューダのオーブンレンジ、カリタのコーヒーミルやビタントニオのドリップケトルなどシンプルで美しい家電が並ぶ。

「家具や家電は新築を機に一新しました。家電はデザインがよく使い勝手のいいものをそろえています。僕たちは平日は忙しくしているので、休日家で過ごす時にコーヒーを淹れてのんびりとした時間を楽しんでいます」(ご主人)。

キッチンの床はワークスペースと同じパーケットフローリング。チーク材が水に強い性質を持っていることも採用の理由だ。

クリナップのステンレスキッチンにはミーレの食洗機がビルトインされており、家事の負担が軽減されているという。

「ミーレの食洗機を使うと、汚れた鍋がピカピカになるんです。ルンバと衣類乾燥機の乾太くんも使っていて、家事がとても楽になりました。家事の時間が減った分、料理などに時間をあてることができています」と奥様。

1階だけで生活のすべてが完結できる

LDKのさらに奥は、水回りとウォークインクローゼット、寝室などが配されたプライベートな色合いが強いゾーン。

キッチンから近い位置に4畳の脱衣室兼ランドリールームがあり、乾太くんと2本の物干しポールで洗濯・乾燥がスムーズに行えるようになっている。

その手前は洗面スペース。

実験用シンクを組み合わせた造作洗面台は夫婦2人で並んで使える余裕があるのだそう。下は愛猫のトイレやルンバ基地になっている。

寝室に向かう廊下の途中には大きな造作の本棚が。

同じようなサイズの棚がダイニング側にもあるが、そちらは雑貨や小物が中心で、裏手にあるこちらには夫婦の本がぎっしりと詰まっている。

その先の寝室はグレーカラーの和紙の壁紙で仕上げられた落ち着ける空間。

照明をブラケットライトにすることで天井がとてもすっきりしている。

コンパクトにまとめられた2階

2階へと伸びる階段は、開放的なつくりで空間が広く感じられる。

階段を上がった先には8畳の個室があり、こちらは将来的に半分に分割できるように引き戸を2つ並べている。

ホールには幅2.7mの大きなスタディーコーナーも。

そして、そこからはリビング全体を見渡すこともできる。

心癒やされる緑豊かな庭

そして、N邸で忘れてはいけないのが南側の豊かな庭だ。

庭一面を覆うのはイワダレソウというグランドカバー。この夏に一気に成長して地面を覆い尽くしたという。

ミモザやオリーブ、ブルーベリーにジューンベリーなど、さまざまな庭木が建物に彩りを添えている。

建物から連続するように、半円状の土間テラスやウッドデッキが設けられており、それらのスペースが庭との距離を縮めてくれているようだ。

「アパート暮らしの時は休日によく出掛けていましたが、この家に住んでからは家で過ごすことが増えました。家の中は快適ですし、庭もあります。休みの日はコーヒーを飲みながらソファに座ってネットフリックスの映画を見たり、猫と遊んだり。キッチンやパントリーに余裕があるので梅シロップを作ったり、新しい料理に挑戦することも増えましたね。それから、友達を招くようにもなりました」(奥様)。

「庭の草むしりもこの家に住んでからの習慣ですが、その時間も楽しんでいます」(ご主人)。

大好きな植物や、お気に入りの家具・雑貨に囲まれて過ごす時間。

休みの日にわざわざ出掛けることがもったいないと思える程にくつろいだムードが、コーヒーの香りと共にふわりと漂っている。

写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

DATA

竣工年月 2021年10月
構造 在来工法
所在地 新発田市
家族構成 ご夫婦
敷地面積 331.50㎡(100.07坪)
延床面積 103.36㎡(31.20坪)
1F   80.18㎡ (24.20坪) 2F 23.18㎡ (7.00坪)
設計 株式会社加藤淳設計事務所
耐震等級 3

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