子育てを終えた60歳前後のご夫婦が、築30年が経つ自宅の大規模改修を検討する…そんなケースは多いのではないでしょうか?
ここで一つ考えなければならないのが、近年の新築住宅との基本性能の違いです。
近年建てられている高性能住宅と比べると、1990年代に建てられた住宅は断熱性能や気密性能が著しく低いものがほとんどです。そのため、冬暖かく夏涼しく快適に暮らしていくためには徹底した断熱改修をする必要があります。
しかし、30年前の子育て期に新築した延床面積30坪台の家を、現在の高性能住宅と同等の断熱性能に引き上げるには、2,500万円以上の費用は見ておく必要があります。
そうして高額な改修費を払っても、地盤改良や基礎工事から行う新築程の性能や耐久性を担保できないのが実情です。
そこで、既存の家を改築する以外の選択肢として、夫婦二人で暮らすのに十分な20坪前後の高性能な平屋に建て替えることを私たちAg-工務店は提案します。
ちょうどこの冬に、新潟市西蒲区にて子育てを終えた50代の夫婦のお住まいの建て替えを行いました。二人暮らしで快適に暮らせる延床面積16坪のコンパクトな平屋です。
こちらの住まいの解説をしながら、タイトルにある「高性能×シンプル×コンパクトな平屋」を選ぶ合理性について詳しく説明をしていきたいと思います。
本記事は分かりやすくお伝えするために、住宅系ライターによるインタビュー形式で、Ag-工務店代表の渡部栄次と、Ag-工務店のパートナーである新潟家守舎の小林紘大さんが解説していきます。

30年住んだ建売住宅を解体し、16坪の平屋に建て替え。
――今回50代のご夫婦の家の建て替えということですが、どのような経緯で建て替えを希望されたのでしょうか?
渡部 元々お施主さんが住んでいた家は、30年くらい前に購入した建売住宅だったんですね。30年前に建てられた家なので断熱性能が低く、夏の暑さや冬の寒さが悩みだと聞いていました。
子どもたちはもう大人になって結婚してそれぞれの自宅を建てたため、今後この家に戻ることもありません。延床面積35坪の2階建ての家でしたが、2階はほぼ使ってなくて、1階だけで生活をしているということでした。
そもそも、あまり好みではない建売住宅を購入していたので、家に対しての愛着はあまりなかったそうです。何年か前に子どもたちが家を建てたのをきっかけに、自分たちの家も改築をするか、建て替えるか、売って別な場所に建てるかを考え始めた…という経緯です。

株式会社Ag-工務店 代表 渡部栄次。
――なるほど。そもそも住んでいた家を気に入っていなかったんですね。築30年というとどのような状態だったのでしょうか?
渡部 内部は結露が酷くてカビが見られましたし、飼い猫による傷みも多かったです。ちなみにキッチンなどの水回りを入れ替えたり、外壁を塗り直したりというメンテナンスはされていなかったですね。
30年住んでいると何かしらリフォーム履歴があるものですが、「いずれ建て替えるかもしれない」という考えがあったので、手を入れようという気持ちにはならなかったのだと思います。
――「改築」・「建て替え」・「別な土地に新築」という3つの選択肢の中から、建て替えを選んだ理由は何だったのでしょうか?
小林 まず、「現在の家を売って別な土地に新築する」という案については、既存の家が期待したほどの金額で売れない可能性が高いことが査定で分かったのでやめました。
そして改築については、やはり35坪という広さの家をしっかり断熱改修や耐震改修をすると費用が大きくなりますし、2025年4月以降は大規模な改築も新築同様に確認申請が必要になりコストが掛かるようになりました。
そこで、夫婦二人で暮らすのにちょうどいいコンパクトで高性能な平屋を建てるケースも検討して頂き、最終的に建て替えを選んで頂きました。

株式会社 新潟家守舎 代表 小林紘大さん。Ag-工務店のパートナーとして伴走し、営業・マーケティング・設計などの支援をしている。今回の平屋の建築ではお施主様の対応および基本設計を担当。
――お施主さんからはどんな家にしたいという要望がありましたか?
渡部 ご主人はYouTubeなどで家づくりの知識を学ばれていて、断熱性能についてこだわりたいという要望がありました。一方奥様はデザインや使い勝手の良さを重視していました。
小林 お施主さんご夫婦が「終の棲家がどうあるべきか?」と考えられていたことが印象的でした。それは30代の子育て世代の家づくりとの大きな違いです。ヒアリングを進めていくなかで平屋が良さそうだと思い、平屋のプランを提案したところ採用して頂きました。

最小限の広さで快適に暮らせる間取りを実現。
――ここからは完成した住まいについて詳しく聞いていきたいと思います。まずは面積や間取りについて教えて頂けますか?
小林 解体費用も含めた全体の予算から建築費を検討し、凹凸のない3間(約5.4m)×5.5間(約10m)の16.5坪がコストが抑えやすくて良いと考えました。0.5坪分がポーチになるので、延床面積はちょうど16坪ですね。
間崩れのない910mmのグリッドで間取りを計画することも重視しています。

それから、限られた面積の中でもLDKは少しゆとりを持たせつつ、それ以外は最小限にする方針をお施主さんと共有して進めていきました。

玄関土間は1坪。窓台や壁のニッチに小物を置けるようにしている。

玄関ホールから奥のLDKまで一直線に廊下が伸びている。左手には寝室、右手には水回りがある。
普段は二人暮らしですが、子どもさんの家族が遊びに来た時に窮屈にならないように、LDKに小上がりをつくって少し空間に余裕を持たせています。

リビング・ダイニングの一角は小上がりになっている。

屋根は通りから見た時に一番きれいに見える形状ということでシンメトリーの切妻屋根にしています。

杉板張りのファサード。玄関ドアは正面からは見えない建物左手に設けられている。
ちなみにリビングは南向きではなく北東側にあるのですが、両隣の家との距離が近い中で北東側に抜けがあったことから、お施主さんと相談してこのような配置にしました。

天然木のキャビネットが特徴的なキッチンはウッドワンのスイージー。
あとは、お孫さんが来た時にリビングでワイワイ過ごすと思うので、隣の寝室のリビング側の壁は収納にして、少し音が伝わりにくくなるようにしています。

寝室のリビング側の壁は収納スペースに。建具には猫用の扉が設けられている。
それから、水回りは南側に一直線にまとめることで配管に掛かる費用を抑えるようにしました。

1畳の洗面スペースと、2.5畳の脱衣室兼ランドリールーム。

トイレは洗面スペースの左手にレイアウト。

浴室は窓のないシンプルなつくり。
トリプルガラス窓を使い、UA値0.33の断熱性能を確保。
――合理性や快適性のバランスが取れたプランになっているんですね、断熱の仕様はどのようにしていますか?
渡部 窓と断熱材は以下の仕様にしています。
- 窓:トリプルガラスの樹脂窓
- 天井断熱:セルロースファイバー250mm
- 壁断熱:高性能グラスウール105mm
- 床断熱:押出法ポリスチレンフォーム105mm
当社の標準的な断熱の仕様で、こちらの住まいのUA値は0.33(HEAT20G2基準をクリア)ですね。

壁にグラスウールを充填する際には、隙間という隙間を埋めるようにしています。例えば断熱材と石膏ボードが隙間なく密着するように、へこみができやすい間柱付近のグラスウールをつまんで少し手前に戻してあげるとかですね。
断熱材の性能を十分に発揮させるには、そういう細かい作業の手を抜かないことが重要になります。
また、現場の大工さんとどこが気密ラインになるのかをきちんと共有した上で工事を進めています。シンプルな形なので気密は取りやすかったですね。

――換気についてはどうでしょうか?
渡部 普段は熱交換型の第1種換気システムを使っていますが、今回はコストダウンのために自然給気をする第3種換気を採用しています。

第3種換気の場合は外からの空気が直接室内に入るため、冬に冷気を感じやすいというデメリットがあります。ただ、この家は平屋でコンパクト。エアコンが効きやすいので、その影響は受けにくいと考えました。

リビング・ダイニングの上は開放的な勾配天井。高窓から自然光が降り注ぐ。
小林 第3種換気はシンプルな仕組みなので、フィルターの掃除などのメンテナンスが簡単というメリットがあります。ちなみに第1種換気システムを入れる場合と比べると30~40万円抑えられますね。
ただ、第1種換気のように湿度調整をする機能がないため、冬場にエアコンで暖房をしていると過乾燥になりやすいです。湿度調整については第1種換気の場合よりも工夫をする必要があります。

短い工期でコスト削減できるのも小さな平屋のメリット。
――それから、コストを抑えるために工夫していることなどはありますか?
渡部 基本的に窓や断熱材などの建材は同じメーカーのものを何年も継続して使っていますので、大量に購入して仕入れコストを抑えるようにしています。同じ製品を使い続けていると、大工さんが扱いに慣れて施工のスピードが上がっていきますので、それも工期短縮とコスト削減につながります。

小林 あと、大工工事の工程をいつもは3カ月くらい取るのですが、今回は2カ月以内で終われるようにスケジュールを組みました。
コンパクトな家なので、大工工事だけじゃなく、屋根も外壁も内装のクロスを張るのも早く終わるんです。各職人さんの待ち時間をつくらないように、通常よりも早めの段取りをすることが重要になります。

渡部 コンパクトな平屋だと足場面積が少なくて済むとか、工期が短いので仮設トイレを借りる期間が短くて済むといったこともコスト削減につながります。
性能向上リノベーションか高性能住宅に建て替えか?考える予算は2,500万円。
――最後にコンパクトな平屋が完成してみての感想や、今後の展望について教えて頂けますか?
渡部 お施主さんからは「エアコン1台で家じゅうが快適な暖かさになります」と喜んで頂けました。コンパクトで掃除がしやすいとか、外の音が聞こえにくく静かなのでゆっくり眠れるといった感想も頂いています。
今回のコンパクトな平屋は夫婦二人で暮らすには十分なサイズだと思います。断熱性能が高く、暑さ寒さによる体への負担が少ないので、そういう意味でも60歳以上の人たちに向いています。
このような平屋を、大規模リフォームや建て替えを考えているシニア世代の人たちにお薦めしていきたいですね。

小林 30年前につくられた建売住宅はいろいろなところで見られますが、今の基準の住宅と比べると性能が低いものが多いです。
ちょうど30年が経った頃に、今回のように改築するか建て替えるか住み替えるかで悩むシニア世代の人は多いと思いますが、あと何年住むのか、売却する場合はどれくらいで売れるのか、解体費用はどれくらいになるのかなどを総合的に考える必要がありますし、ローンを組むとしたら何年のローンを組めるのか?健康状態に問題がないか?といったことに注意が必要です。

キッチン手前はカウンターを兼ねた造作の収納スペース。奥に見えるカップボードも造作。
その中で今回のように、「性能向上リノベーション」vs「コンパクトな平屋の新築」という構図になりやすいと思います。
費用対効果が焦点になりますが、今回は「2,500万円で性能向上リノベーション」をするか、「2,500万円で建て替え(本体2,000万円+解体・浄化槽・外構・地盤改良等の諸経費500万円)」をするかという選択になり、建て替えを選んで頂きました。
2,500万円で高性能住宅を建てるというのは地域工務店の得意とするところですし、Ag-工務店はリフォームも性能向上リノベーションも新築もやっていて、さまざまな選択肢を偏りなく提案できるのも特徴です。悩んでいる方はぜひご相談を頂けたらと思います。

平均寿命が延び、人生が100歳まで続く時代になりました。
60歳はあと40年続く人生をどのような住宅で暮らしていくかを決める節目と言えそうです。
若い頃と比べて家で過ごす時間が長くなるライフステージでは、快適に暮らせる断熱性能が高い家の価値は一層高いものになるでしょう。
その一方で家が大きい必要性はなくなるため、子育て世代の家づくりと比べて建築費を抑えることができます。
築30年が経過した自宅をどうするか?その選択肢の一つとして、高性能×シンプル×コンパクトな平屋への建て替えを検討してみてはいかがでしょうか?

本記事でご紹介したお施主様邸DATA
新潟市西蒲区
延床面積 52.89㎡(16.00坪)
基本設計 小林紘大(株式会社新潟家守舎)
実施設計 株式会社加藤淳設計事務所
施工 株式会社Ag-工務店
